マクロビオティック one テーマ19 (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
天然醸造で長時間熟成 陽性の八丁味噌
名古屋といえば味カツや味噌煮込みうどん、どて焼き、味噌唐揚げといった名物の八丁味噌を使った料理がたくさんあります。
八丁味噌とは、岡崎城から八丁(870m)の距離にある岡崎市八帖町で、江戸初期から伝統製法で作られた豆味噌のことで、別名「赤味噌」とも呼ばれています。
普通の味噌と違って米や麦麹を用いず、大豆麹と塩を大きな杉に仕込み、天然の川石を山のように積み上げて重石とし、天然醸造で二夏二冬以上の間熟成させて作られます。
八丁味噌は「畑のお肉」といわれる大豆が原料のためアミノ酸が多く、栄養価の高い食品です。
穀物の中では比較的陰性な大豆に塩と重石の陽性、約3年間という時間の陽性をかけてゆっくりと熟成させているので、動物性たんぱく質並に陽性化しています。
八丁味噌はコクがあり、濃厚な風味が特徴で、必須アミノ酸のバランスがよいので、肉や魚を摂らない人のたんぱく源としてもおすすめです。
また、ダシを用いなくても旨味成分が出るので、煮込み料理にピッタリです。
味噌の赤みは褐色物質メラノイジンで、抗酸化力(サビ取り効果)が強く、大豆のサポニンやレシチンの働きも加わって血管壁にこびりついた油脂(コレステロール)を洗い流してくれます。
したがって脂質代謝異常(高脂血症)や動脈硬化、高血圧、糖尿病といった生活習慣病におすすめです。
心・小腸系を強化するスーパーフード、鉄火味噌
鉄火味噌は、この八丁味噌に陽性な根菜類を刻んで炒め、炒りあげたものです。
作り方はゴボウ、ニンジン、レンコンを1ミリ角のサイの目に切ります。
細かく刻むことで陽性化し、野菜のエネルギーを引き出すことができます。
それらの野菜に生姜を加えて炒め、さらに八丁味噌とごま油を加えて2~3時間丹念に炒りあげたふりかけ状のものです。
ゴボウのリグニン(食物繊維)やニンジンのβカロチン(抗酸化色素)には抗がん作用が、レンコンのタンニン(カテキン)には気管支系統を整え体の酸化(老化)を抑える働きがあります。
こうしたパワフルな根菜類に八丁味噌が合わさってできたのがスーパーフードの鉄火味噌です。
東洋医学の陰陽五行では、赤色で苦味のある食品は夏場を管理する心臓と小腸の経絡によいとされています。
したがって渋みと赤色を持つ八丁味噌は心・小腸系の強化にピッタリの食品といえます。
苦味のあるゴボウ、赤色のニンジン、収性のあるレンコンに八丁味噌を加えて長時間炒めて作った鉄火味噌は、小腸での造血力や心臓の血液循環力を強化できる食品といってもよいでしょう。
放射性物質による内部被ばくと病気の関係
最近、突然死が増えていますが、どうもその原因の一つに放射性物質による内部被ばくの問題があるのではないかと思われます。
1986年のチェルノブイリ原発事故で放射性物質による一番の汚染を受けたのがベラルーシの諸地域です。
そこで放射性物質と病気との関係を研究しているユーリ・バンダジェフスキー博士によると、セシウム137による内部被ばくによって若い人に心臓血管病が多発したことが報告されています。
これはセシウムが筋肉や血管の新陳代謝を阻害し、細胞や組織が破壊されるからであるとしています。
博士の研究の中で、ベラルーシの住民の死因の主なものは心臓病とがん(悪性腫瘍)であったことが統計的に示されていますが、なかでも心臓病による死因は全体の約53%と、圧倒的多数を占めています。
特に、チェルノブイリ原発事故の後処理に関わった人びとの間でこのような症状が増加していることがわかっています。
また、子供の場合は、1キログラムあたり50ベクレル以上の放射性セシウムを取り込むことによって相当の病的な変化が起きていることや、1キログラムあたり10ベクレル程度の蓄積でも様々な身体系統、とくに心臓の筋肉のトラブルにつながることも報告されています。
心臓のトラブル、疲れに 鉄火味噌の活用を
私は、こうした症状の予防に鉄火味噌が役に立つのではないかと考えています。
なぜなら放射性物質は拡散して広がっていくという陰性な性質が強く、腸壁をケロイド化させて造血力を低下させたり、電離作用で心臓の細胞を崩壊させたりする作用を持つからです。
したがって、そんな陰性な放射性物質は陽性なパワーを持つ鉄火味噌で、ある程度中和できると思われます。
また、夏は暑さによって心臓の経絡が疲れやすい時期なので、鉄火味噌を上手に活用するとよいでしょう。
おむすびの具として用いてもよいし、そのままご飯にふりかけて食べるのも美味しいです。
また、旅行の際は、鉄火味噌にお湯を注げば即席みそ汁になります。
自然食品店で入手できるので、夏場の心臓の強化に鉄火味噌をご活用ください。
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月刊「むすび」 2017年7月号より
正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com