甲状腺を癒す食養生【主食は体と心の軸を作るもの】

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磯貝昌寛の正食医学【第71回】甲状腺の病気

甲状腺の病気と食事

甲状腺の問題を抱えて食養相談や研修に来られる人に共通していることがあります。食歴の中で、特にホルモン剤を多く含む食品を多食してきた傾向があるのです。

ホルモン剤を多く含む食品は、乳製品、鶏卵、養殖の魚介類、食肉類(鶏肉、牛肉、豚肉など)が主です。

ホルモン剤の多くは成長の促進を目的にしています。

通常の成長よりもずっと早く成長させてしまうのですから、遺伝子には大きな負荷がかかり、遺伝子異常をまねくことは科学的にも実証されています。

家畜や養殖に使われる成長ホルモン剤は、私たちの甲状腺だけに影響するのではなく、人間のホルモンと関係の深い病気にも影響があります。

乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん等は、成長ホルモン剤を用いた人工飼育の動物性食品が大きく影響しています。

甲状腺に関しては、バセドウ氏病(甲状腺ホルモン亢進症)、橋本病(甲状腺ホルモン低下症)に罹る人の食歴に魚肉の加工食品を多く摂取している傾向があり、ちくわ、かまぼこ、はんぺん、魚肉ソーセージなどを多食している人が多いのです。

一方、甲状腺がんは放射能との関係も疑われていますが( 放射能との関係は私の経験ではまだ確たることが言えないので控えさせていただきます)、経験から言えることは、乳製品との関係が深いと考えています。

乳製品は甲状腺がんだけでなく、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、大腸がん等とも大きな関わりがありますが、他の食物との食べ合わせでどこにがんができるかが分かれてきます。

体の上部にできるがんは、下部にできるがんに比べて陰性です。

私の経験と陰陽の理論を組み合わせて考えると、甲状腺がんは乳製品と砂糖、乳製品と果物( ホルモン剤と農薬使用の果物)の組み合わせが大きく影響しています。

バセドウ氏病

バセドウ氏病は甲状腺ホルモンが出過ぎてしまう病気で、甲状腺ホルモン亢進症といわれます。

甲状腺ホルモンは体の代謝を亢進( 度合いを高める)させる働きがあるので、動悸、息切れ、指先の震え、暑がり、汗をかきやすい、疲れやすい、体重減少、微熱、イライラ、下痢、月経不順等の症状が出てきます。

また、眼球が突出するのもバセドウ氏病の特徴です。

動物の成長ホルモン剤を人間に投与すれば、こんな症状がでるのではないかと想像できる症状ばかりです。

体重が増えずに減っていくのは、ホルモン剤を排毒させようとする体の反応だと想像しています。

動悸や暑がり、微熱、イライラなど、症状そのものは陽性の反応にみえますが、バセドウ氏病のこれらの症状の時に、梅醤番茶やタンポポコーヒー等の陽性な飲み物で症状が軽減されることが多いのを診ていると、バセドウ氏病は陰性な反応だと考えています。

橋本病

橋本病は甲状腺ホルモン低下症ですから、代謝が低下し、そのために起こる様々な症状があります。

顔や手足のむくみ、体重増加、気力低下、動作の緩慢、皮膚の乾燥、毛髪減少、声が嗄れる、寒がり、眠くなる、もの忘れがひどくなる、ろれつが回りにくい、便秘、貧血、月経異常などの症状が出ます。

一見すると陰性な症状のように見えますが、陽性な食品を摂っても症状が改善せず、陰性な食品を摂ることで症状が緩和されていきます。

バセドウ氏病にしても、橋本病にしても、症状の陰陽と手当ての陰陽が、陰と陽で合わないのはなぜなのでしょうか?

「陰性に見えて、実は陽性」「陽性に見えて、実は陰性」なのはどうしてなのでしょうか?

それは、ホルモンが出過ぎて体の陽性なエネルギーを放出し過ぎているのがバセドウ氏病であり、ホルモンが低下して陽性なエネルギーを閉じ込めて陰性なエネルギーだけが目立つのが橋本病だと考えています。

自律神経の働きと似ているところがあります。

橋本病を陽性な病気と捉えると、陰性食が中心になります。ジャガイモ、トマト、ナス等のナス科の食物や、豆腐や納豆など大豆製品も好んで食べられるのならば多用します。

実際、橋本病の方は陰性食品を好んで食べる傾向があります。

甲状腺を癒す食養生

家畜や養殖のホルモン剤が人間の甲状腺に負担をかけて疾病をもたらせているわけですから、これらのホルモン剤を排毒、排泄しなくてはなりません。

玄米をおいしく食べる工夫をするのが食養生の第一です。玄米にハト麦や大麦( 丸麦、押し麦)を2~3割入れて炊く麦入り玄米ごはんもいいでしょう。

バセドウ氏病であれば玄米を圧力鍋で炊くのもよいですが、橋本病であれば麦入り玄米を土鍋や安全な金属の鍋で炊くのがおすすめです。

しかし、バセドウ氏病であっても長期間圧力鍋で炊飯すると陽性になり過ぎることもありますから、時々、土鍋や金属の鍋で炊いた玄米を食べて、「おいしい」と感じるようならば土鍋炊きに変えた方がいいでしょう。

玄米の排毒能力が高いからといって自分の味覚本能を無視して玄米を食べるのはよくありません。

甲状腺の病気の人だけでなく、多くの人に言えますが、主食を今の自分の味覚本能に従って食べることは大変重要なことです。

玄米、分搗き米、場合によれば白米も、または様々な麺類の中から今の自分にあった主食を選択することです。

主食は体と心の軸を作るものですから、自分に合った主食をいただくことは食養の中でもっとも大事なことです。

根菜を食養の基本である皮を剥かずに調理して食べることも大切です。

小豆も甲状腺を浄化する働きがありますから、おいしく感じるのであれば週に2~3食摂っていいでしょう。

小豆かぼちゃを基本に、橋本病であれば小豆をリンゴと煮てもよく、バセドウ氏病であれば小豆を昆布と煮てもよいでしょう。

成長ホルモン剤は動物性食品に含まれて私たちの体に入ってきたのですから、動物性食品を排毒排泄することも大切です。

肉にはジャガイモ、キャベツ、胡椒など。魚介類には大根、ねぎ、生姜など。鶏卵にはトマト、長ねぎ、舞茸など。乳製品にはニンニク、レモン、バニラなどが排毒を促します。

ものすごく「おいしい」と感じる食べ物が体に合っていて、排毒を活性化してくれます。

甲状腺に生姜シップや里芋パスターを貼ることも大事ですが、甲状腺への手当ては週に一度程で十分です。

腸や肝臓、腎臓、子宮や卵巣などの比較的陽性な臓器には毎日のように生姜シップと里芋パスターの基本的な食養手当てを施すのは良いのですが、甲状腺や乳房、肺や食道などの比較的陰性な器官には生姜シップと里芋パスターの過剰な手当ては禁物です。

甲状腺には週に一度手当てをして、その他の日にはお腹と背中に生姜シップをしたら良いでしょう。

自然治癒力を高めるのにはお腹を十分温め、腰もしっかり温めることがとても重要です。

月刊マクロビオティック 2017年11月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。