前回の記事:未来に進む中国 過去に沈む日本――「波動医学」講演に招聘されて……(1)
70周年、最大目標は「人民の幸福生活」
翌21日、講演会場となる寧波市に向かう。
上海から南下し、高速で4時間ほどの距離。ちょうど東京から名古屋ほど。
途中で立ち寄った南湖サービスエリア入口には「祝中華人民共和国70周年」の電光文字。
そういえば、国中いたる所に「建国70周年」を祝う看板や飾り付け。
街中が祝賀ムードに沸いている。トランプ大統領も「70 周年に配慮し関税率の引き上げは先送り」と表明。
10月には祝賀で7日も連休になる。
テレビ放送も、祝賀一色だ。「目標スローガン」が掲げられ、トップは「人民幸福生活是最大的人権」(写真10)。
国家目標は「人民の幸福な生活という最大人権を守ること」と、はっきり謳っている。
認知症対策でも、中国政府は「老人に幸福になってもらう」ことを明快に表明していた。
共産主義とは、まさに万民の平等と幸福を目指すものだ。
中国政府は、それを70周年記念事業のトップに掲げている。
サービスエリアで感心したのはトイレの清潔さ。観葉植物まで飾っている。
さらに、お土産に菱の実、蓮の実、棗まで売っていた。
「子どもの頃はよく食べた」と西堀氏も、大喜び。
新しいものは積極的に取り入れる反面、昔からの物も大切にする。ここでも、中国の懐の深さを感じた。
寧波への途上、中国が世界に誇る海上橋を渡った。
「アジアで一番有名な橋だよ」と連さんも自慢気。
数十キロ……あまりにまっすぐ延々と続くため、橋の欄干がピンク、青、緑、黄、赤……と塗り分けられている。
これは、居眠り運転を防止するため、という。これも、中国近代化の一つの証明である。
沿岸では、雨に煙る巨大な風力発電タービン。
一列に並んでゆっくり回るのが見えた。中国は、今や、世界最大の風力発電大国なのだ。
南の寧波市に到着。滞在先は「パン・パシフィック・ホテル」(太平洋大飯店)。
明日の講演会場でもある。
食卓満載!バイチュー乾杯!中国流おもてなし
上海でも、寧波でも、中国側の歓待がすごすぎる。
ときに、食事はお腹が悲鳴をあげそう。わたしはご存じのように一日一食、おまけにヴィーガン(完全菜食)だ。
しかし、このような国際交流では、相手に合わせるようにしている。
まずは朝食からして圧倒される。いずれのホテルもバイキング・スタイルだが、日本とはスケールが違う。ワン・フロア丸ごとビュッフェという感じ。
覚悟を決めてテーブルに向かう。さらに、昼食。
そして、熱烈歓迎の夕食が待ち構えている。
「4000年の歴史をもつ中国では、美味しい食事をたっぷり提供するのが、最大のおもてなし」という。
寧波のホテルの宴会場が超絶豪華。中国の豊かさには、いまさらながらめまいがする(写真11)。
中国側の自己紹介に続き、「カンペイ」が延々続く。
度数50度を超える「バイチュー」の波状攻撃に、こちらも臨戦態勢、体力勝負だ。
次々にくり出される料理は、とても食べきれない。残すのは申し訳ない、と思ったが、後で「残すのがエチケット」と知ってホッとした。
この席で、中国側の通訳女性を紹介された。
施洋(シー・イョン)さん。26歳。純朴で、はにかむ笑顔が愛らしい。日本のアニメなど、独学で日本語を学んだ、という。その挑戦心はアッパレ。
事前に講演内容40項目を、送っておいた。
施さんは、すでに項目ごとに訳文を準備してくれている。ありがたい。
普段は上海の日本企業に勤め、貿易実務を担当している、という。
ちなみに、ふだんは一切、現金は持ち歩かない。「すべてスマホ決済デス」に、あぜん……。
全て存在は波動である 物質は存在しない
23日、講演当日。講演会場はホテルの大広間。
その前には結婚式に使われていた、というだけに絢爛豪華。下見がてら隣を覗
くと、まさに結婚式の真っ最中。
舞台両脇に巨大液晶スクリーン。華やかなドレスにメイクの新婦が写し出され、もはや映画顔負けだ。
講演会場の入り口には、案内パネル。西堀先生と私が並んでおり、いやでも緊張する(写真12)。
豪華な会場でひときわ眼をひくのが幅10mはあろうかと思える巨大液晶パネル。
中国のホテルでは、もはや当たり前の設備だ。
「これほど大きいサイズは、日本では作れない。ここでも、日本は負けていますね」(西堀氏)
そして、男性司会者が声を張り上げ、オープニング挨拶。
最初に西堀氏が登壇。会場から万雷の拍手。彼の話は「音響免疫療法」から「液浸コンピュータ」まで、多岐にわたった。
さすが、1200件もの特許を持つだけのことはある。通訳の連さんとは20年来の付き合い。双方、乗りにのって時間が押してしまった。
しかし、施さんと事前打ち合わせしており、40項目に画像プレゼンも、実にスムースに行えた。
演題は「波動医療のパイオニア『音響チェア』とは?」。
内容は、現代医学の限界、薬物療法の過ち。そして、「万物は波動であり、物質は存在しない」というノーベル物理学賞を受賞したマックス・プランク(量子力学の父)の紹介。
「個別波動が生物形態を決定する」ソルフェジオ周波数。
さらに「氣エネルギーの正体」「万能細胞が体細胞に変わるメカニズム」「切
り傷が治る仕組み」「トカゲの再生システム」など、高度な生理的神秘をわかりやすく解説した。
また2500年前、「音響は医療である」と喝破した天才ピタゴラス。
さらに、「音響チェア」の医療効果、ガン、糖尿病などへの応用……と、短時間ながらポイントを押さえ話すことができた。
中国側も内容は衝撃的だったようだ。
夜の懇親会では、何人かの中医(中国医学)の医師から「波動医学」三部作をぜひ読みたいと〝熱烈〟要請を受けた。
後で聞いたが、講演の様子は中国全土にニュースで放映されたという。
中国政府が「波動医学」にシフトする決意の表れだろう。
最終日は観光。中国五大仏教寺院の一つを訪ねた。
そのスケールの大きさに絶句。
「若き空海など遣唐使も、この山に登り学問を修めたのですね」(西堀氏)
中国共産党がこの伝統ある仏院を手厚く保護し、保存していることに驚いた。
もっとも感銘を受けたのが山頂に鎮座する巨大な弥勒像である(写真13)。
笑顔がなんともいえない。片膝立てて、おう来たか? といった感じ。
仏はこうでなくちゃいけない。日本の仏像は、カタまじめ過ぎる。
鷹揚な笑顔に布袋腹、これまで見た仏像のなかでも最高にチャーミングだ。
次に向かったのは、蔣介石の生家。粗末な家を想像していたが、まったく違って豪壮な邸宅だった。
よくもまあ、中国共産党は政敵の実家を観光地にまでしているとは……!
またもや、その懐の深さだ。
この悲運の英雄も地元の人々にとっては、永遠のお国自慢のようだ。入口には観光客向けに、そっくりさんがほほ笑んでいるのがご愛嬌(写真14)。
三階建て、おしゃれな住宅が 600万円とは!
上海への帰路は、新幹線。西堀先生いわく「すでに中国全土で数千キロ以上もの新幹線網が完成しています。これも日本人はまったく知らない」(写真15)。
日本の中国報道は、まさに悪意に満ちている。
「中国の悪いとこしか、流さないでしょ」と、連さんも、なかば諦め顔。
しかしこの10年、国家を挙げての努力で、高速鉄道の開発と整備では中国は世界トップに躍り出ている。
たとえば北京発上海行きは1日41本で最高速度は350キロ!
試運転では486キロを達成。将来は時速500キロの「超高速」鉄道網を目
指す。
2010年に研究開発をスタートさせており、2011 年時点で走行テストはすでに成功している。
現行高速鉄道網も新規の年間建設計画は、前年比45%増、総延長6800キロとは驚嘆する。
2020年には総延長3万キロで、日本の新幹線の10倍以上……日本の完敗である。
また、通訳の施さんによれば、この新幹線の料金は身長で決められる。
120㎝以下は無料、120から150㎝は半額だそうだ。なんともわかりやすい。そして学生は学生証があれば半額だという。旅行が無料だそうだ。
車窓からの風景にも感服した。
まず、見渡すかぎりの緑である。川辺、水辺には丁寧に樹々を植えている。
日本に見られる直線のコンクリート護岸は皆無。生態系保護への配慮が見てとれる。(写真16)
おそらく、ドイツのビオトープなどを学んだのだろう。
感動したのはあらゆる道路に並木を植えていること。遠くの山々も禿山は皆無。
どこまでも緑に覆われている。中国が国家を挙げて植林、緑地の保全を行ってきたことが伺われる。
さらに感心したのは粗末な家が一軒も見当たらないこと。戸建住宅は、ほとんどが三階建て。きれいに並んでいる(写真17)。
なかなかおしゃれで、どことなく北欧の風景を思わせる。
通訳の施さんから、おどろくべき話を聞いた。
「中国政府は、農村の古い建物の建て替えを奨励してます。新築の家は三階建てが標準で、約600万円で手に入ります」
写真のような北欧風住宅が、600万円とは……!
寧波から上海まで約2時間、食い入るように車窓を眺めたが、質素な家は見当たらなかった。
日本では、住宅は狭い敷地に押し込められ、ひしめき合っている。あえぎ声すら聞こえてきそうだ。
なるほど中国には豪壮な邸宅はない。
しかし、ゆったりした瀟洒な住宅が風景に溶け込んでいる。
なぜ、日本のメディアは、このような事実を報道しないのか?
それは、あからさまな悪意があるからだろう。
このような緑麗しい風景を見たら、日本ではなく、中国に住みたく人も増えるのではないか?
なるほど、香港デモでわかるように、中国は一党独裁である。普通選挙もない。様々な問題をはらんでいることも事実だ。
しかし、共産党は必死で、その原点に戻ろうと努力しているように思える。
アメリカの若者7割が「社会主義を望む」という。
それほどまで、現在のアメリカは気の遠くなる格差社会なのだ。日本はもっとひどい。
若者の自殺率世界ワーストワン……。
通訳、施さんの笑顔に思う。中国の若者は生き生きと未来を見つめている。
日本の若者は、どうだろうか?
上海最後の夜。西堀先生の熱心なお誘いで「上海ジャズバンド」を訪ねた。
第二次大戦前から建物のインテリアも演奏法も同じという。まさに国際都市のレジェンド。ジャズメンたちは、皆70 歳を超えた白髪。
サックスが奏でるテネシーワルツの調べに、いつしか目頭が熱くなってきた。
上海の夜は、こうして更けていく……。
ザ・フナイ 2019年12月号 マスコミのタブー200連発〈117〉 より
今回は著者の意向により記事を全文公開。
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。