缶詰内側に潜むコーティング材の盲点 

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船瀬俊介連載コラム

食品包装から塩ビ管、洗剤、殺虫剤まで…

【前回の記事】

プラスチックから有害な環境ホルモンが溶出 

ソトーとソンネンシェインは、この試験管内から抽出した化学物質を、ラットに注射してみた。

するとラット体内でも、実験用プレートと同じ反応が現れたのだ。

たとえば卵巣のないメスのラットにP・ノニルフェノールを注射すると、子宮内膜が細胞増殖をはじめた。

これはエストロゲン投与と同じ反応である。

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かれらは、この新発見の喜びよりも不安と恐怖が募るばかりだった。

「加工食品の包装業界では、アルキルフェノールを含む塩化ビニールがつかわれている」「塩ビの水道管を通る水はP・ノニルフェノールに汚染されていた」

さらに「ノニルフェノールが避妊薬にも…」

さらに工業用洗剤や殺虫剤、薬用化粧品などに使用されている化学物質が分解される過程で、ノニルフェノールが生じることにも気づいた。

それはアルキルフェノール・ポリエトキシレートと呼ばれる成分で、1990年に全世界で二七万トンも使用されていることを知り、二人の研究者は唖然とする。

この成分は、動物の体内や、下水処理用植物などに棲みついているバクテリアによって分解されると、たちまちノニルフェノールを生成してしまうのだ。

すでに1992年、ヨーロッパおよびスカンジナビアの十四か国が、2000年までにこの物質の製造および使用禁止とすることが、決定された。

ソトーとソンネンシェイン、2人の学者の執念の謎解きの勝利は「幅広い用途に使われ、十分に研究もされている化学物質が、ホルモン作用を攪乱することを示した、最初の研究報告」となったのである(『奪われし未来』翔泳社より)。


奪われし未来 増補改訂版

缶詰の7割からビスフェノールA続々検出

同じようなミステリーの犯人が、スタンフォード大学医学部の実験室でも見つかった。

やはり実験用フラスコ、水差しなどプラスチック製実験器具に潜んでいたのだ。それはビスフェノールであった。

このエストロゲン様物質は、ポリカーボネートと呼ばれるプラスチックからしみ出していた。

スタンフォード大学のスタッフは、ビスフェノールAは、「わずか2~5ppbという超微量で、実験細胞にエストロゲン反応を起こす」ことをつきとめた(ppb 10億分の一)。

新たなる環境ホルモンの発見である。

このビスフェノールAの効力は、エストロゲンの2000分の一にすぎない。しかしビスフェノールAは、10億分の1レベルの濃度で効力を発揮するのだ。

この犯人像は、意外な日用品にまで潜んでいた。

……環境ホルモンを研究する学者たちは、一種の探検家である。それまで、まったく予想もできない日用品を、かれらは詳細に観察、探査する。

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たとえば、スペイン、グラナダ大学の姉弟学者、ファティマ・オレア(食物毒物学)とニコラス・オレア(医師、内分泌系がん専門)の二人は缶詰内面コーティングに使われるプラスチックをターゲットにとりあげた。

缶詰を手にとった人は、まさに金属だけで、缶詰容器はできていると思ってしまうだろう。

ところが金属製の缶に直接、食物を入れて密閉すれば、水分に触れる内面は、錆びたり、金屈が溶け出たり、金属臭が食物にうつったりする。

こうなると、とても食べられたものではない。

このような金属成分の浸出を防ぐために行われるのが、プラスチック・コーティングである。

アメリカで生産される缶詰の85%、スペインで生産される缶詰の約40%に、このようなコーティングが施されているという。

乳がん細胞増殖させる量の二七倍も検出

かくして、二人の姉弟学者によってアメリカ、スペインで試買された20社の缶詰が分析された。

その結果、のき並み環境ホルモンのビスフェノールAが検出された。

これはプラスチック添加物としてしられる。それが缶詰内部に溶出していたのだ。缶詰の大半が汚染されていた。

缶詰内の液体が、乳ガン細胞を増殖させるかーーー。

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その実験もおこなわれた。その結果、20個の缶のうち14個の缶詰から採取した液体に、乳ガン細胞を分裂増殖させる十分な量のビスフェノールAを含んでいた。

もっとも高濃度汚染された食品からは80ppbものビスフェノールAが検出されている。これは乳ガン細胞を増殖させるのに十分な量の、さらに27倍もの高濃度である。

なぜ、単なるプラスチック添加物が、乳ガン細胞を増殖させるのか?

これこそ環境ホルモン作用の恐ろしさである。

つまり、ビスフェノールAは、女性ホルモンであるエストロゲンの類似合成物質のため、生体はこの化学物質を女性ホルモンと誤認してしまうのである。

過度の女性ホルモンは、強い発ガン作用、ガン促進作用などがあることが知られている。

缶詰内側に潜むコーティング材の盲点

検査した缶詰の約70%に、環境ホルモン作用が認められた。平均では23ug(マイクロ・グラム)のビスフェノールAが検出されている。

ショックはつづく。

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コーン、グリーンピース、ミックスベジタブルなど内容物も驚くほど高レベルのビスフェノールAに汚染されていたのだ!

その量は、一缶あたり10~18ug(マイクロ・グラム。ug=100万分の一g)これは乳ガン細胞を増殖させるに十分な量である。

つまり、これら缶詰を一個食べただけで、人体は明らかに環境ホルモン作用を受けてしまうのだ。

つづいて二人は、ビスフェノールAが溶け出した缶を完全に空にして、空缶に蒸留水を入れ、圧力を加えながら加熱した。

すると、蒸留水からビスフェノールAが検出されたのである。比較対照として、缶詰に入っていない新鮮な野菜にも同じ実験をおこなってみた。

とうぜん、ビスフェノールAはまったく検出されなかった。

この缶詰汚染を暴いたドラマを世界最初に報じたのは著名な『奪われし未来』(前述)であろう。

同書は「生体活性プラスチックは、こうして、およそプラスチックとは無縁と思われていた缶詰からもしみ出していた…」と驚きをかくさない。

月刊マクロビオティック 2000年10月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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