甘酒は肝臓を強化し肌まで美しくする飲む若返り薬

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船瀬俊介連載コラム

桃の節句、といえば甘酒。

わたしの子どもの頃も、祖母がよく作ってくれた。お米の香りがして、熱い甘酒をフーフー吹きながら飲んだものだ。

しかし、いつの間にか、日本人全体の食卓、暮らしから姿を消してしまった。温泉地などで、ときおり「甘酒いかがですか?」とふるまわれると、なんとなくホッとする。

これもまた、滅びゆく(滅ぼされゆく?)日本の文化のひとつなのか……。

わたしは、最近日本人の衣食住すべてにおいて、その完成度、美的なること、深遠なることに驚き、これをいかにしても残さねば、という熱き思いにかられている。

たとえば、着物に代表される和衣の美しさ。世界の名だたるファッション・デザイナーたちは、こぞってこう言うそうだ。

「日本人よ、キモノだけは滅ぼさないで!」。着物(KIMONO)の美を、より深く理解しているのは海外のアーティストたちなのだ。

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日本民家の美しさに驚嘆したのは来日、滞在する青い目の芸術家たちだ。彼らは民家を修復、改修して、住みつき、さらに民家保存を訴え続けた。

それが昨今の古民家ブームにつながったのだ。食もしかり。

かつてアメリカ上院栄養問題特別委員会リポートは、日本の伝統的料理こそが、もっとも理想的な食事である——と断定、アメリカ国民に推奨した。

話は、甘酒から大きくなってしまったが、日本人は、洋風、洋食狂い、カタカナ志向から、そろそろ目覚めるときではないか。

誤解を恐れずにいえば、敗戦後の熱にうかされたような欧米心向、模倣こそは、アメリカの巧妙な占領政策に端を発すると確信する。

コカ・コーラ、マクドナルドをはじめとするファストフード、肉食…などの流行こそは、まさにアメリカによる敗戦国、日本人の餌づけ戦略“だったのだ。(拙著『食民地』ゴマブックス参照)

さてさて……日本人というか、わたし自身が忘れかけている甘酒のはなし……に戻そう。

日本の伝統の味、技術を守って、奮闘している老舗業者はいるものだ。わたしは、彼らの存在を知るたびに、頭が下がる。胸が熱くなる。

日本人全体が軽挙妄動、軽佻浮薄……グッチだ、イタめしだ……なんだと浮かれているときに、きちんと足を踏ん張って、伝統の味覚を守り通す性根は、称えてしかるべきだと思う。

江戸時代は景気払いに売り歩く

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甘酒製造元として、おそらく日本屈指といえるのが名刀味噌本舗であろう。

同社高原宣隆氏によれば「甘酒は、古くから日本酒同様に親しまれており、江戸時代には、屑双払いに効果があるとの触れ込みで、甘酒売りが、江戸の町を売り歩いた…」という。

このことから甘酒が俳句の世界では夏の季語になったとは面白い。

専門書『発酵食品』(中野政弘著、光琳全書21)には「……甘酒は、米飯もしくはカユに米こうじを加えて糖化したカユ状の食品」とある。


発酵食品 (光琳全書 (21))

「名前は酒であるがアルコールを含まないので酒としては取り扱われていない」「その起源は、清酒のばあいと同様非常に古いことは確か……」といいながら

「でんぷんがアミラーゼ(糖化酵素)で糖化した段階であるから酒以前のものであった、とも考えられるが、これを証明する適当な史実が見当たらない……」とは太古からあったのではないか。

なにはともあれ「砂糖が甘味料として普及する以前の食生活において、爪要な甘味食品」であったことは、まちがいない。

著者の中野氏も、甘酒の効用をすすめる。

「現在は、いわば斜陽的存在であるが、その香味は、砂糖のような単純なものでなく、独特のものがあり、これを適宜希釈して、少量の食塩やショウガを加え、温めて飲用に供するほか、加工用として漬物や淡口しょうゆの甘味料としてもちいられている」

中野氏によれば「原料としては、国内産水稲が最適」という。

製造過程での、こうじ菌を加えたもろみの水分は約六0%、温度五五度で撹拌すると約八時間で糖化が完了する。

この温度以下だと雑菌が繁殖したり、腐やアルコール発酵が起こったりして風味が低下するので、この五五度維持が甘酒づくりの鉄則である。

完成した甘酒は、水分六0%、糖分二七%、たんばく質二%、さらに医学的効能のある微量成分を多種類ふくむ(後述)。

飲むばあいは「二倍程度の水でうすめ、塩O・1%を加えると廿味が濃厚となる」(中野氏)という。

さらに「ショウガを少々加えて飲むと美味」というからお試しあれ。

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肝臓強化、髪ふさふさ・・飲む若返り薬

日本の発酵食品の研究では、右に出るものがない学者。

それが小泉武夫氏(東京農業大学教授)だ。彼は、甘酒の効用についても造詣が深い。

健康雑誌『壮快』(1996年三月号)に寄せた一文にこうある。

「甘酒は、肝臓を強化し、髪をふさふさにして肌まで美しくする、飲む若返り”薬“だ」

これは、なんと……!

ふつうのお酒は、そのアルコール作用で、飲み過ぎると肝臓を弱めてしまうことは、誰でも知っている。

しかし、甘酒は肝臓を強くする効能がある……とは呑ん兵衛には嬉しいではないか。

しかし、江戸時代に暑気払いに売り歩いた、というからには、夏バテつまり体の弱ったとき効果があることを、江戸庶民は知っていたのだろう。

小泉教授によれば、甘酒が若返りの妙薬であることが判明したのは「酒粕成分」を研究する過程でわかったという。

日本酒と甘酒の違いは、次のとおり。

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日本酒は、米と米こうじ、水を仕込み容器に入れて、さらに酵屈を加えて増殖発酵させる。米こうじはカビ菌の一種で、米でんぷんを分解糖化させるはたらきをする。

酵母は、さらに、その糖分をアルコール発酵させる。

だから、日本酒は、この二段階のバイオ発酵で醸し出されるのだ。酵母が増殖したものを”もろみ”と呼ぶ。

さらに20日ほど発酵させて、袋に入れて加圧すると芳香鮮烈な原酒が垂れほとばしる。

これぞ初搾り原酒で、これがじつに旨い!さて、この袋のなかに残ったものが酒粕である。

甘酒の作り方は、まずドロドロのおかゆに米こうじを加える。

その、こうじ菌作用で米でんぷんを糖化させてできあがり。だから、ほんのり甘い。「酒になる一歩手前の状態といえる」(小泉教授)。

酵母菌でアルコール発酵していないので、むろんアルコール分はなく、子どもでも飲めるわけだ。

なかには、酒粕に砂糖を加えて熱湯を注いで”甘酒“と称する向きもあるようだ。

しかし、これは”甘けれゃイイダロ“の乗りで邪道だ。

どちらにせよ、酒粕と甘洒は、同一成分といってよい。つまり甘酒を飲むということは、酒粕をいただくことと同じなのだ。

『壮快』(前出)でも小泉教授は「酒粕と甘酒は栄養的に同じものと考えてかまいません」と述べている。

では、甘酒(酒粕)が、肝臓に効能がある…とは、どういう理由からだろう?

ポイントはこうじ菌である。

酒づくりに使われる米こうじは、蒸した米にこうじ菌というカビを繁殖させたもの。蒸米にこうじ菌胞子をまき、一定温度を保つと四八時間後には、蒸米表面から内部にかけて、びっしり菌糸が覆い米こうじができあがる。

この米こうじは日本酒の原料だけでなく、味噌やお酢、そして甘酒づくりにも欠かせない。

ペプチドによる細胞活性化作用

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小泉教授によれば「そのこうじ菌の中に、わたしたちの体にとって重要な機能をもつ物質が次々と発見されて注目を浴びている」という。

つまり「こうじ菌が、人体の健康維持や老化防止に役立つ機能性物質を生産している」のだ。

その代表がペプチドである。

これはたんぱく質が分解されてアミノ酸に変わる中間過程で生成される物質。酵母菌は、酒粕中で一部自らの菌体も分解する”自己消化“と呼ばれる作用を起こす。

そのようにして菌体を構成するたんぱく質を分解してアミノ酸を増やしていく。さまざまな研究によって、この酒粕に含まれるペプチドには、人間の細胞強化作用が発見された。

たとえば、弱った肝細胞もペプチドで活性化される。

夏バテも、体全体の細胞がグッタリ弱った状態。それに”酒粕~ペプチド“は活を入れてくれるのだ。

江戸庶民の暑気当たりに甘酒ー—という知恵は、じつに医学的根拠があったのだ。

『壮快』誌から、小泉教授の甘酒礼讃を、少し引用してみよう。

「酒粕や甘酒は、アルコール濃度のきわめて低い食品です。これを適量摂取することは、肝臓を健康にすると考えられるでしょう」。

その他、甘酒に含まれる機能性物質としてこうじ酸を挙げる。

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この物質にも「老化防止や若返りの効果が期待できる」という。

「地球上には、何千、何万というおびただしい数の微生物(菌類)が存在していますが、このこうじ酸という物質は、こうじ菌だけが生成することのできるきわめて特殊な物質です。

このこうじ酸が、最近、養毛剤や育毛剤に人れられていることは、知っている人も少なくないでしょう。

これは、”こうじ酸“の特殊な還元作用によって、老化して弱った頭皮や毛穴を矯正し、活力をとりもどす効果があるためです」

「こうじ酸を含んだ甘酒を適量飲むことでも。老化した部位に作用して、育毛や美肌の効果が得られるのではないかと思います」

甘酒には、その他、ビタミンB1、B2など重要なビタミンやミネラル類も多く含んでいる。

以上述べた栄養素は、すべて肝臓機能を健康に保つためには不可欠のものばかり。

小泉教授はこう締めくくる。

「肝機能が弱っている人、アルコールで肝臓を酷使している人に、ぜひ甘洒をおすすめしたい……」

「甘酒ェ?そんな女、子どものニセ酒が飲めるかい!」なんて、映呵を切って見栄張っているばあいではない。

辛党の弱った肝臓を癒す妙薬として、甘酒が欠かせないことがよくわかった。夏バテ、疲労回復にも大いに効くのだ。

ファイト!一発”リポビタンD“やらアリナミンVなんぞをCMにつられて飲むよりも、甘酒を冷蔵庫に常備してグイッとやるほうが、グンと効くのではないか。

発酵飲料ヨーグルトの落とし穴

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甘酒と似た発酵飲料に、ヨーグルトがある。

東の甘洒、西のヨーグルト……といえるだろう。東欧諸国などに古くから伝わる発酵乳の一種。

「生きた乳酸菌が腸内有害菌を抑える」というふれこみで、日本でも大変なブームだ。日本でも愛飲している人は多いだろう。

それよりも多いのは、その大衆版ともいえるヤクルトだ。これも”生きた乳酸菌“が売り物。しかし、これに異を唱える学者も多い。

たとえば母乳育児の推奨で知られる小児科医の真弓定夫医師は「ヨーグルトは飲まないほうがよい」と指導している。

その理由の第一は乳製品自体がもつ問題点。なるほどヨーロッパ民族は酪農とともに生きてきた。

その理由は「寒冷気候が厳しく穀物が育ちにくい風土だったので、乳製品を代替食として摂取するうちに2000~3000年かけて乳糖分解酵素(ラクターゼ)が大人になっても生成される特異な体質へ適応している」から……という。

あらゆる哺乳類は、乳離れとともにラクターゼ分泌はピタリと止まる。

それ以降は乳を受け付けなくなる。自然の摂理である。

それに逆らって乳製品をとり続けると、体はそれを異物と認識してアレルギーなどさまざまな異常反応を起こす。

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牛乳を世界で最も飲むノルウェー人の骨折率は日本人の五倍という。牛乳の過飲が骨カルシウム脱落を促進しているのだ。

牛乳を飲む人ほどガン、精神的不安定、暴力行為さらに白内障などが多い…とは、その異常反応の現れだろう。

ヨーグルト、ヤクルトなど”生きた乳酸“が豊富……と謳うのも滑稽……と真弓医師は指摘する。

「生きた乳酸菌ならお漬物を食べればいいのです。乳酸菌がたっぷりです。カルシウムなら昆布でダシを取った味噌汁で十分です」

つまりは甘酒は、ヨーグルトに勝る。

発酵飲料も、カタカナから、ひらがなへ。このキーワードを胸に刻みたい。

月刊マクロビオティック 2005年1月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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