船瀬俊介連載コラム
わたしは、二○代半ばでヨガと出会い、この体験が、その後の人生に大きな影響を与えました。
出会ったのは世界的に著名な沖ヨガの指導者、沖正弘導師。
その風貌は端倪すべからざる風格と威厳が漂い、前に単座すると本当に緊張しました。
三島ヨガ道場で、最初にインタビューを許されたのですが、まさに緊張の極み。案内された先生の部屋は、ろうそくの炎の明かりの向こうに沖指師。
「何か質間があるかね」と間われ、思わず「……“信念”とはいったい何でしょう?」と発すると「ふむ…」と一呼吸おいて「物事は、一応見えておるようだな」とうなづき「しかし、まだ色盲だッ!」には、うつむいてしまいました。
横で案内役のジャージ姿の訓練生がほくそ笑む。すると「貴様らは、めくらだッ!」と大一喝。
縮みいったその姿を思い出します。
沖ヨガと出会いで「病気を治すことは、病院以外でも可能なのだ」ということを学びました。
沖先生は、見かけはまるで織田信長のごとき裂吊の気迫を周囲にまき散らしておられましたが、その心根は真に慈愛に満ちた方でした。
「IN OUT これが生命だ!」
沖先生が患者や訓練生を前に行った講和で、印象的なものがあります。
無言で黒板に大きく「IN OUT」と板書し、チョークで黒板を叩き腹の底から野太く一声。
「これが、生命(いのち)だ!」。
「いいか。入れたら出せ。出したら入れろ」。つまり新陳代謝。われわれは、食事でもクスリでも、入れることばかり考えがち。
しかし、沖先生は「入れる」ことと同じくらい「出す」ことが大切だ、と強調された。ナルホド……とうなづきました。
食事も、呼吸も、エネルギーも、心も、情報も……入れた分だけ、出さなければならない……
つまり、生命とは身体という器を通過する”流れ“であり、この“流れ“が滞ることが、生命の異常……病気である……ということが、よく理解できました。
「流れる水は腐らない」といわれます。逆に言えば「流れない水は腐る」。そこには様々な腐敗菌が繁殖し、メタンガスの泡が浮いてきます。
自然界の川の流れですら“滞り”は、腐敗を生みます。
ましてや、生命活動で“滞り”は、さまざまな疾病を生み出すことは、一目瞭然です。
消化器系なら消化不良、便秘、腸閉塞……。循環器系なら狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などがあげられます。
ガンという悪性腫瘍など、その“滞り”の代表格でしょう。
沖ヨガでは『求道実行』という機関誌や沖先生の著作物などで、具体的な養生法、治療法なども指導していました。
面白いのは、それらは全て古代から伝わる民間伝承医療であったことです。
ヨガが五○○○年以上も伝わる民衆の体験科学であることからも当然でしょう。その中に「手当法」が、いくつも解説されていました。
たとえば「里芋パスタ」とか「豆腐パスタ」などなど。パスタとは”すりおろした“ものの意味。つまりペーストと同義。(「こねたものの意」「糊」「軟膏・泥剤」:『広辞苑』)。
「豆腐パスタ」など半球状のキャベツに砕いた豆腐を入れ、そこに後頭部を浸けているイラスト。なんとも奇妙な図。
正直「これで病気が治るのかな?」と不思議に思います。
それでも「頭を漬けたら気持ちいいだろうな」と感覚的には理解できました。患部に当てたパスタは一定時間がたって外すと「色が変わり」「悪臭を放つ」。
つまり患部の皮膚から体内の“毒”を吸い出している!
まさに「IN OUT」。民間医療の底力を目の当たりにした驚きを感じました。
ガンは血液汚れ(毒)の”浄化装置“
「経皮毒」という言葉があります。
皮膚は毒を吸収します。それと同様に、毒を排泄もするのです。
「ガンは血液の汚れ(毒)の“浄化装置”である」
これは自然医学の泰斗、森下敬一博士の至言。
つまり「ガンは個別臓器の疾病ではなく、全身病である」。
これは食事療法の父、マックス・ゲルソン博士の名言です。東西の自然医学の巨頭は互いにガンの本質を衝いています。
それは、五○○○年以上の歴史を持つヨガ理論と、まさに同一の真理を語っているのです。
「誤った食事などで汚れた血液は、そのまま放置すると腐敗し敗血症を起こし急死する。そこで、ガンが汚れた毒を自ら引き受け血液を浄化して宿主を延命化させているのだ」。
つまり、ガンの“ゴミ捨場”理論。
わたしは、この理論に目からウロコの思いがしました。自然界の出来事には、すべて理がある。
ガンだって、できたくて、できているんじゃない。主人(宿主)を守るため、自ら犠牲になって毒を引き受けている……そう思うとガンが健気に、愛しく、思えてきます。
むろん、ガンになる前の臓器でも炎症や腫れは毒素(体毒)の滞りが原因。やはり毒素を排出すれば、健康な臓器に戻るのです。
『家庭でできる自然療法』のすすめ
そこで沖ヨガ理論の“IN”“OUT”を思い起こします。
体外からまちがった食事という毒をINしている限り、ガンが治るはずがない。“ゴミ捨場”はやむをえず大きくなるしかない。
つまり“ゴミ捨場”を小さくするには”IN“を減らし、“OUT”を増やすのです。
“IN”は、これまでに述べたマクロビオテック(玄米正食)あるいは断食などの食事療法。
では“OUT”は?
それは民間伝承の「手当療法」がベストです。
その具体的やりかたはーー
(『家庭でできる自然療法』東城百合子著、あなたと健康社より)
※まず事前の注意点
①手当ての前に、必ず排尿をしておく。
②食後の満腹時はさける。空腹時に行う。
③入浴は手当ての前に。血行が落ち着くまで三○~一時間はあける。手当ての終わった後は入浴しない。
■芋パスター:里芋の皮を厚くむく。(うすいとカユクなる)すりおろし、芋と同量の小麦粉、芋の一割のおろし生姜をまぜ、ねりあわせる。
これを布(又は和紙)に厚さ約一cmにのばして包む。患部を生姜湯でむした後に貼る。四~五時間して、乾ききらないうちに外す。
また生姜湯で患部を温めてから、また新しい芋パスタを貼る。(熱をもっている場合は、温めずすぐパスタを貼る)(図A)。
かゆくなる人はジャガイモを代用。
ガンの他、腫れ物、内臓痛、ねんざ、リウマチ、神経痛など。とくに熱のある炎症に効く
■豆腐パスター:豆腐を水きりし、よくつぶす。これに約一割のおろし生姜をまぜ、つなぎに小麦粉をまぜ、水がたれないくらいに。
それを二cmくらいの厚さに木綿の布(又は重ねたガーゼ)にのばしてはみ出さないように包み、患部に当てる。
あとは、芋パスターと同じ。急性肺炎でも二日くらいで解熱するほど効果あり。
■味噌パスター:古い便が出ない腹痛など便秘症にきく。一回の量は大豆粒味噌四○○~ 五○○gを絹に入れかき回しながら温め、これを布に一cmくらいの厚さにのばし、上にガーゼを貼って、ヘソの部分は和紙でふさいでぺったり貼る。
上からゆでコンニャクで温めるとさらに効果あり。一~ニ時間でとる。
■そばパスター:そば粉をボールに適量入れ、ぬるま湯を注いでマヨネーズより少し固めにねる。
木綿の布に一・五~二cmの厚さにのばし、包む。
ヘソの部分だけ和紙かボール紙で覆い、おなか全体に貼る。(スギナを細かく刻んではる直前にまぜてもよい)
一~二時間で腹水を吸ってしっとりするのでとりかえる。パスターの前に、生姜湿布(後述)をすれば、さらに効果あり。とりかえる前にも生姜湿布するとよい。
■ビワ生葉パスター:ビワの葉は東洋医療でも、さまざまな卓効があることがしられています。その生葉パスターは、痛みを早くとる効果があります。
ビワの生葉三枚ほどを丸めておろし器でおろす。(細かく刻んでもよし)その中におろし生姜を一割ほどまぜる。
少し水を加え、小麦粉を適量くわえてまぜペースト状にする。ガーゼにのばして包み、痛むところに当てる。
上にラップを当て濡れないようにして、三角布などで巻いて動かないよう固定して休む。
続きはこちらか: 「手当療法」で欠かせない温湿布療法【こんにゃく温湿布、生姜湯湿布】
月刊マクロビオティック 2007年08月号より
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。