船瀬俊介連載コラム
「開け……ゴマ!(オープン・セサミ!)」
この呪文は、世界中の子どもたちに、あまりに有名だ。いわずと知れた『アリババと五〇人の盗賊』で登場する魔法の言葉。
この呪文を岩戸の前で唱えると、アラ不思議堅く閉ざした岩戸が、ゴロゴロ軋みながら開く。
その奥には盗賊たちが隠し貯えた金銀財宝が……書いているうちに、子どもの頃に熱中して読んだ物語の光景が浮かんでくる。
ちなみにアメリカの有名な幼児向けTV番組『セサミ・ストリート』のタイトルも、この物語のエピソードから来ている。
セサミ(胡麻)が、なぜ、宝物の扉を開ける呪文に使われたのだろう。
それは、こういうことらしい。古代のアラビアやヨーロッパの人々にとって、どうもゴマは驚異的な食べ物だったらしい。
ある言い伝えでは「ゴマ一粒と、牛一頭を交換した」とさえ記録されている。
これは、あくまでたとえだろうが、それほどゴマは彼の地の人々にとって貴重品だった、ということだ。
それは、つまり栄養価というより薬効が、ケタ外れであったので、宝石なみに珍重した……ということだろう。
六〇〇〇年の歴史・・世界最古の健康食
「ゴマは不思議な食物である……」
これは、日本の草分け的研究者のつぶやきである。謎と大きな可能性を秘めた、小さな粒に迫ってみよう。
その原産地は、中央アフリカである。六000年前から油を取るために栽培されてきたという。
まさに人類の歴史とともに存在してきた。ゴマの歴史は半端ではない。
それは「精力がつく」「高カロリー」「食物を美味しくする」「香味油の素」……だけが珍重された理由ではない。
「広く世界で賞用されたのは……ゴマはいろいろ薬効をもった健康によい食品である、と深く信じられてきた」からである。(『ゴマーーその科学と機能性』並木満夫編、丸善プラネット閻)
たとえば、エジブトから出土した世界最古の医学文献(BC五五二年)には「ゴマの効用」が説かれている。
また医聖として名高い古代ギリシアのヒポクラテスは「ゴマは活力を生み出す優れた食品」と明言している。
中国の古典的医学書『神農本草経』(前三世紀)にも「……内臓の機能が傷ついた病気や、弱り衰えた病気を治すことができる。五内と呼ばれる肝臓、心臓、牌臓、肺、腎臓の五臓の機能を補い、元気や体力を益し、肌の肉づき成長させ、骨の髄液や、脳を充たす作用がある。
久しく服用すれば、だんだんと身が軽くなり、年をとっても老いがないようになる……」と記載されている(同)。
これは早くいえば臓器を活性化させ、骨、脳を若々しく保ち、老化を防ぐということだ。
つまりスーパー健康食品であることが、この古代医学書からも判る。これら効能は、現代科学の細密な解析で、つぎつぎに立証されている。
「老化防止」作用ーーその秘密は、ゴマ油の極めて優れた抗酸化性に秘められている。
たとえばゴマ焙煎油は、六O℃の解放試験でも数十日たっても酸化されない。これは、他の植物油では考えられない。驚異的な抗酸化機能だ。
老舗の天魅羅屋は、胡麻油を最上の揚げ油と珍重するが、それも故あってのことであった。
俗にいう活性酸素(フリーラジカル)が、疾患の九割以上の元凶となっている……。これは、もはや常識。さらにガンや老化なども”酸化”によって引き起こされる。
よく「からだがサビつく」というが文字通り”酸化“して”サビ“ていく現象なのだ。
ゴマの「老化防止」は、まず、その抗酸化機能によって動脈硬化が予防されることによる。
グラフAは、血清中の過酸化脂質(MDA)に対するゴマ成分(セサミノール)の抑制効果を測定したもの。
医者が高脂血症の治療薬として処方するブロブコールとα—トコフェロールと比較すると、なんという皮肉!これら市販の「高脂血症」治療薬より、はるかに優れた抑制効果を発揮しているのだ。
医者には「高脂血症の患者には、これらクスリよりゴマを渡しなさい」と言いたい。
老化速度を四割に抑えることを実証
老化測定マーカー(指標)として8ー0HdGと呼ばれる物質が使われる。
これはDNA (遺伝子)の酸化傷害で生じ、尿中に排泄される。この物質を測定すれば老化の進行度合いがハッキリとわかる。
グラフBは、ゴマ成分の一種セサモリンを一%添加した食事を与えたラットと、そうでないラットの尿中8ー0HdG量を比較したものた。
ゴマ成分を与えたラットの老化速度は、ふつうのラットの約四割に抑えられていることがわかる。
さらに肝臓や腎臓の脂質過酸化が抑制されていることも観察された。
古来言い伝えられる「ゴマは若さを保つ秘薬」とは真実だった。
降コレステロール作用で若さを保つ
グラフCは、動物実験による大動脈内のコレステロール沈着の比較データ。
エサにゴマ脱脂粕一〇%を添加したグループは、コレステロール沈着が約四分の三に抑制されることがハッキリわかる。
血管へのコレステロール沈着こそ、血管の老化。
さらに心筋梗塞や脳梗塞などの引き金となる。心臓発作やポックリ病を防ぐにも、ゴマの常食は常識としたい。
コレステロールとは、ギトギトした脂を想像してもらえばよい。
血液のサラサラした流れを阻害し、体の過酸化つまり老化を促す。
グラフDは、ラット実験で確認されたゴマ成分(セサミン)による肝臓コレステロールの低下作用だ。
対象群(左)はエサに多量コレステロールを配合。同左少量配合。
コレステロール配合の多寡にかかわらず、セサミンは降コレステロール作用を示すことがわかる。
同様結果はハムスター実験でも証明されている。血清コレステロールでも、同じ低下作用を示す。
「降圧剤」より、ゴマかけごはんだ
セサミンの降コレステロール作用のメカニズムには、まず小腸からのコレステロール吸収阻害がある。
グラフEは、セサミンのコレステロール吸収阻害を証明している。
ゴマ成分で血中コレステロールが抑制される……ということは、高血圧も抑えられる。
グラフFは、ラットの血圧に対するセサミンの降圧効果である。なんとも感心するほどの高血圧の改善ではないか。
私の知人に、医者からもらった「降圧剤」を真面目に毎日飲んでいる人が何人もいるが、その人たちに、このグラフFを見せて、こう言ってやりたい。
「ごはんにスリゴマかけて食ったほうが、はるかにマシだよ!」。
酒呑みに朗報!アルコール分解を促進
さてーー。つぎは「ゴマは酒呑みにも効く」というありがたい話だ。
わたしは、大きな声ではいえないが、酒が大好きだ。たまには、本当にたまにはシコタマ飲むときもある。
ところが、なんとゴマは「アルコール分解を促進する」というではないか。
グラフGは、その証明。ラットにアルコールを経日投与して、血中濃度の変化を比較したもの。
セサミン投与群はグンと血中アルコール濃度が抑制されていることがわかる。つまり、それだけ肝臓でのアルコール分解が促進されたのだ。
まさに、酒呑みには、心強いデータではないか。
「酒好きよ、酒を飲むときにはゴマ料理は欠かすな!」を合い言葉としよう(それでも飲み過ぎはよくない。いうまでもないか)。
ゴマは、洒の酔いを抑えるーー
それを証明する面白い実験もある。グラフHは、酒を飲んだあと、顔(アゴとのど)の温度変化を測定して、酔いの進行を測定した結果だ。
一目瞭然。悪酔いしたくなかったら、酒の肴にゴマ豆腐、青菜にゴマだれ……など、意識して食べるようにしたい。
(以上グラフAーJは『ゴマその科学と機能性』より引用)。
月刊マクロビオティック 2003年8月号より
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。