船瀬俊介連載コラム
ガソリン車は、もはや“過去の遺物”。
「地球時代――ガソリン車は、もはや“過去の遺物”。環境危機(エコ・クライシス)を救う切り札。いま21世紀に向け、近未来EV(電気自動車)ワールドが開く」
…これは、私が熱い想いを込めて書いた『近未来車EV戦略―電気自動車(エレクトリック・ビークル)が地球を救う』(1993年・三一書房)のキャッチコピーだ。
その想いは、今も変わらない。
「エンジンを放逐せよ」(ゴア元副大統領)
そのとき、同じメッセージを投げかけている世界的、大物政治家がいた。
アメリカ元副大統領アル・ゴアだ。「旧式の技術である内燃機関(すなわちエンジン)を25年後には地上から完全に放逐しなければならない」
(『地球の掟―文明と環境のバランスを求めて』1992年・ダイヤモンド社)とは彼の言葉だ。
その理由は、ガソリン車のエネルギー効率はせいぜい10%どまりであり、残りの90%は廃熱や環境汚染物質などで大気中に排出されるからだ。最悪の非効率性……。
だから、ガソリン車は“過去の遺物”だというのが、ゴア氏の主張だ。
この本は米国で出版されてから10数年にもなるが、いま読んでも全く色褪せていない。それどころか、ゴア氏の予見はますます現実のものになりつつある。
この非効率かつ環境破壊型のクルマが、いまだに地球上にひしめきあい、ますます数を増やしていること自体、異常というほかはない。
なぜなら、すでにEV(電気自動車)というパーフェクトな代替テクノロジーが存在するからだ。
燃料電池車(FCV)とハイブリッド車には限界が
2004年3月、イタリア・ピニンファリーナ社での風洞試験に臨む「Eliica」。この直後、片山右京氏による走行試験で370.3km/hを記録する
代替テクノロジーというと、まず「政府が後押ししている燃料電池車(FCV)があるではないか」「今、世界市場でメジャーになりつつあるハイブリッド車はどうなのか」と反論が返ってきそうだ。
だが、そのいずれもが、環境問題の解決という点からすれば、大きな欠点を抱えている。
■燃料電池車(FCV):
燃料電池は水素を燃料にし、空気中の酸素と化学反応させることで電気を起こす装置。
燃料電池車(FCV)は、車に搭載した燃料電池で発電した電気でモーターを回して走る。
現在のガソリンやディーゼルエンジン車は、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などを排出するが、燃料電池車が出すのは水だけで、「究極の低公害車」と言われているが…。
FCVの最大の欠点は「水素なければタダの箱」であることだ。
「2030年までに燃料電池車を累計1500万台普及させ、日本全国8500カ所に水素ステーションを建設する」--これは資源エネルギー庁が掲げた壮大なプランだ。
しかしホンダの吉野浩行前社長は「普及するわけがない」と発言している。
この壮大な計画を作成した政府担当者ですら「個人的考えだが、数値達成は無理だと思う」とあっさり認めている(『東京新聞』2004/7/30)。
不可欠なインフラとなる水素供給網の欠落は、普及のための致命的な障害となる。これに比べて、電気自動車(EV)は家庭用コンセントで充電可能だ。
燃料電池車は“化学反応”発電なのでどうしてもパワー不足となり、補助モーターが必要。
それだけ構造が複雑で、コスト高となる。エンジン車と同じ駆動系を備え、800~900度もの高温になるのでラジエーター(冷却装置)が不可欠……
などなど、価格・重量・コスト面で高くつく。さらに、エネルギー効率はハイブリッド車にも及ばないという。
最大の矛盾は、今、流通している水素のほぼすべてがナフサ(ガソリン)や天然ガスから作っていることだ。
これらから水素を取り出せば、CO2が残る。もちろんこれは大気に放出される。
普及可能性、環境問題の解決、いずれの面でもEVとどちらが優れているかは、子供でも分かる。
■ハイブリッド車:
トヨタ「プリウス」の先行は見事! 燃費32km/Lは、ガソリン車の約1.5倍走行だ。
しかも、この車種をブランド化し、「環境に配慮した車を運転するのは、エスタブリッシュメントの証(あかし)」というイメージを普及した功績は非常に大きい。
ただし、これはまだ発展途上の車だ。
ハイブリッドの文字通り、ガソリン車とEVを足し算しているので、二重構造となり、構造は複雑でコスト高となる。
さらに、もう半歩“前進”してパーフェクトEVとすれば、燃費効率はガソリン車の3倍強となり、構造は約6割とシンプルになる。
電気自動車(EV)がハイブリッド車を環境負荷の面で凌ぐことは自明だ。
引用:日経BP社 2005年8月1日
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。