「植物油は健康に良い」の落とし穴 

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船瀬俊介連載コラム


油 このおいしくて不安なもの―くずれたリノール酸神話 油とつきあう健康法 (健康双書)

日本の食品業界が、揺れている。

それが「リノール酸神話」の崩壊である。その震源となった一冊の本が手元にある。『油このおいしくて不安なもの』(農文協)。著者は名古屋市立大学(薬はるみ学部)、奥山治美教授。

米国ベイラー医科大、イリノイ大の客員教授を歴任するなど、海外の研究実績が長い。専門は脂質生化学。

つまり、日本の食用油研究では第一人者。

その奥山教授が「日本人は”リノール酸とりすぎ“症候群」と警告する。

「えっ…?リノール酸はからだによかったんじゃないの」

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たいていの主婦は、ビックリするはずだ。私もかつて「老化防止にリノール酸」というCMコピーを、何度も女性雑誌などのサラダ油広告で目にした記憶がある。

各マスコミはこぞってリノール酸神話を煽りつづけてきたのだ。

それが、国際的な専門学者から”リノール酸とりすぎ“症候群などと断言されれば、めん食らってしまうのも当然だ。

戦後五十年……。これまで巷間に流されてきたさまざまな食品神話が、次々に崩壊している。

たとえば「肉は良質たんぱく質」という”肉食神話“の崩壊。さらに、「パンはアミノ酸を運ぶ」というパン神話の瓦解。

いまや、ご飯のほうがパンよりアミノ酸バランスがいいことは栄養学の常識だ。

つづいて、「カルシウムは牛乳」という”牛乳神話“も崩れ落ちようとしている。(同八月号参照)

牛乳神話の崩壊

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そして、こんどはリノール酸神話の崩壊…である。

「植物油は健康によい」栄養指導の落とし穴

脂肪つまりアブラ…。これについては、何度もかん違いが繰り返されてきた。戦後、高度経済成長期には「もっと、脂肪を!」と、叫ばれた。

「日本人は、外国人にくらベて、脂肪摂取が少なすぎる」。そこには一抹の悔しさ、コンプレックスがこめられていた。

しかし、しだいに、どうも「動物脂肪の取り過ぎは心臓マヒなどの引き金になりそうだ…」と気づき始めた。

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日本人の何倍ももりもり肉を喰らうアメリカ人は、あこがれの的であった。しかし彼の国の人に二倍、三倍と心臓マヒの頓死が多いことに気付き面食らう。

「これは、どうも肉食が原因らしぃ…」さすがの栄養学者も気付いてきた。

そこで一転「動物脂肪は控えましょう!」の一大合唱。

「脂身は、体によくない」まさに、そのとおり。大腸ガンなどの引き金になり、できるだけ摂らないに、こしたことはない。

すると「動物脂肪はよくないから、植物脂肪に変えましょう」というキャンペーンが開始された。

「植物油は健康によい」。

日本全国みな、そう信じてスーパーの売り場の棚からサラダ油を一本、二本と買い物カゴに掴み入れた。

奥山教授はいう。

「成人病の栄養指導を受けますと、動物脂肪はできるだけ減らして植物油を増やすようにといわれます。このような栄養指導が広くゆきわたってから、もうずいぶんの年月になります」

ところが「この栄養指導に落とし穴があった」という。

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「ベニバナ油やコーン油、ヒマワリ油、綿実油などを長期にわたって摂取すると大変なことになることが、わかってきたのです」

その結論は「リノール酸とりすぎ症候群が私たちの健康をむしばんでいるのです」

お歳暮にベニバナ油などが飛ぶように売れた

奥山教授は、リノール酸を全否定しているわけではない。

なるほど、人間のからだにとって「必須脂肪酸」である。

つまり人間に不可欠なアブラで、不足すると「成長がとまって、子どもが生まれなくなる」「毛が抜けて病気になる」などの欠乏症におちいる。

さらに摂取すると「血しょうコレステロール値を下げてくれる」などの効能もある。

だから、ほとんどの栄養士からお医者さんまで「動物脂肪を減らして、リノール酸の多い植物油をとりなさい」と”栄養指導“したわけである。

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ところが、体重60kgの人に必要なリノール酸はわずか1~2g。これはご飯二杯半で十分。食パンなら二枚で2.3g。つまり、ふつうの食事で十二分。

別にとる必要はまったくない。それどころか、過剰摂取の弊害があらわれてくる。

なのに「食品業界は競争して、食品のリノール酸含有量を高めようとしてきましたし、リノール酸の多いベニハナ油などが、健康食品として大々的に売られているのです」(奥山教授)

このへんが、日本人のオッチョコちよいさ加減か。

「お中元xxxのベニハナ油!」「搾りたてのコーン油」などのCMが盛んに流され、サラダ油が飛ぶように売れた。

これも「リノール酸はからだにいという神話があったからこそ。そこに奥山教授は、ショッキングな事実をつきつける。

もう―つの必須脂肪酸「αーリノレン酸」発見

「実は最近、もう―つの必須脂肪酸が見つかったのです」

それがαーリノレン酸である。リノール酸が「成長」や「皮膚」を正常に保つはたらきがあることに対して、αーリノレン酸は「脳」「神経」機能を正常に保つはたらきがある。

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さらに重要な発見がある。リノール酸とαーリノレン酸の「バランス」が、数多くの慢性疾患に深くかかわっていたのだ。

その「アンバランス」つまりリノール酸とりすぎ症候群が、「アレルギー」「高血圧」「心筋梗塞」「発がん」…の引き金になっていた。

この奥山教授の指摘は衝撃的だ。

さらに「高リノール酸食と、高度aーリノレン酸食とではネズミの寿命に10%以上の差」という報告には驚く。

「いま、仮にガンの特効薬が作られ、ガンで死ななくなっても、日本人の寿命は四%ぐらいしか延びません。

それに比べますと、リノール酸とαーリノレン酸の選択が、どんなに重要であるか、わかっていただけるでしょう」(奥山教授)

「リノール酸は、からだにいい」と思い込んだため「身のまわりの食品は、リノール酸偏重の道を突き進んでいる」と奥山教授は、警鐘を乱打するのだ。

月刊マクロビオティック 2000年11月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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